概要
書名:ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス
作者:栗田シメイ
出版社:毎日新聞出版
出版年:2025/3/5
本の長さ:200ページ
ジャンル:ノンフィクション
内容:かつて、独裁的な理事会の謎ルールによって「渋谷の北朝鮮」と揶揄され、資産価値が周辺相場の半分近くまで下落した秀和幡ケ谷レジデンス。いかにして新体制へと生まれ変わり、再び輝きを取り戻したのか。管理組合交代を巡る1200日の闘争記録。
見どころ
・リアルな証言:54台のカメラで24時間監視されていた住民たちの生々しい「恐怖」と「怒り」がに書かれている。
・ 潜入と徹底取材::外部からは見えなかった「要塞」の内部事情を、著者が緻密な取材で解き明かしていく緊張感。
・法の武器:感情的な対立だけでなく、区分所有法や管理規約を駆使して独裁を崩していく「ロジカルな戦い」のプロセスが学べる。
・圧倒的な逆転劇:どん底まで落ちた資産価値とコミュニティが、住民の力で再生していくラストは圧巻
この本から得られること
・マンション管理の重要性。
・「組織変革」のヒント。
・話が通じない人間が権力を握る恐ろしさ。
・無関心が招くリスク
購入の決め手
・テレビやYouTubeで話題に取り上げられていて、「渋谷の北朝鮮」だとか「クソ物件オブザイヤー」と騒がれたあの騒動の裏側で、実際には何が起きていたのか?」という知的好奇心。
・理事会の言い分に興味があったため。
謎ルールによるトラブルの事例
・身内や知人を宿泊させると転入出費用として10、000円を請求された
・平日17時以降、土日は介護事業者やベビーシッターが出入りできない
・夜間、心臓の痛みを覚えて救急車を呼ぶも、管理室と連絡が取れず、救急隊が入室できなかった
・給湯器は※バランス釜のみで、浴室工事は事実上不可
・「Uber Eats」などの配達員の入館を拒否される
・購入した部屋を賃貸として貸し出そうとすると、外国人や高齢者はダメだと、管理組合から理不尽な条件をつきつけられた
・マンション購入の際も管理組合と面接があった
・引っ越しの際の荷物をチェックされる
※バランス釜 浴槽設置型の風呂釜
(10ページ)
独裁体制を覆すには
日本の法律(区分所有法)の下では、区分所有者(オーナー)の過半数の賛成があれば、その役職を解任することができる。
体制が簡単に変えられない理由
・「過半数」という名の高いハードル。
・監視の目:住民同士が立ち話をするだけでチェックされる環境。
・無関心層の壁:賃貸に出していて現地にいないオーナーや、「関わりたくない」と諦めている住民。
・委任状の奪い合い:理事会側も、自分たちの地位を守るために強引に委任状を集めようとしている。
感想
「理事会 vs 普通の生活を望む住民」という構図は、一見すると地味な争いに見えるかもしれませんが、もしこれが「自分事」だったらと想像すると、これほど恐ろしいことはありません。
読み進めるうちに、気づけば住民たちの苦悩に深く感情移入していました。
表面的なメディア報道とは違う「密度」
テレビやYouTubeでは、よくこんな風に語られます。
・「理事会は悪、住民は被害者」という単純な構図。
・「最後は委任状を集めて住民側が勝利! ハッピーエンド♪」という結末
しかし、本書が描く中身の密度はまるで違います。独裁体制を覆すために必要な「過半数の委任状」を集めることが、どれほど困難で泥臭い作業であるかが克明に記されています。
「味方同士」の対立というリアル
「おかしなルールをなくしたい」というゴールは同じでも、住民全員が同じ考えではありません。
マンションを立て直すために立ち上がった有志たちの間でも、激しい葛藤がありました。
強硬派: 法的手段を使い、旧体制を即座に完全解体したい。
穏健派: 対話と合意形成による正常化を求めたい。
このほか様々な意見がぶつかり合い、が解散寸前まで追い込まれながらも、再び協力し合い、関係を修復していく過程。
そこには、表面的な美談ではない、有志たちの「血の通ったドラマ」がありました。
独裁者の正体と、現代社会への警鐘
また、狂ったルールを作り上げた理事長の人物像にも触れられています。
彼もまた一人の人間であり、共感はできずとも「彼なりの正義」を貫こうとした結果があの惨状だったのか……と考えさせられました。
この物語は、「理事会から自由を奪還する」という結末があらかじめ分かっています。
しかし、そこに至るまでの過程には、結末以上に読む価値があります。
「自分には関係ない」と問題から目を逸らしている間に、権力者が暴走し、気づけばその火の粉が自分に降りかかってくる。
この構図は、現在の日本が抱える政治の問題にも通じる、極めて重要な教訓を含んでいると感じました。
以上です、ありがとうございました(^^)

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